庭へ窓から急降下
私が幼稚園の頃
東北から上京していた父親の妹 叔母と私は同居していました
父親と叔母は仲が悪かったせいか叔母の部屋は長屋の一番奥にあり
父親とは鉢合わせしないように気を配っていた
ある雨上がりの夜の日の出来事
私は叔母が好きだったので叔母の部屋に1人で行くことがある
叔母の部屋に行く途中の長い廊下の真ん中で叔母と会い
ふすまのような大きさのガラス窓から
「雨があがったね」と
ふたり並んで灯りのない暗い庭を眺めていた
窓は開いていた
父親がいきなり背後から叔母を押した
叔母の身体は地面に叩きつけられる
私も叔母と一緒に窓から落ちた
丁度 落ちた場所が叔母の太って柔らかい身体の上だった
いきなり私の身体がぶわっと飛んで
柔らかい叔母の上 に落ちた
ふにゃっとして気持の良い感触
私の下に横たわっている叔母の色白の横顔は泥で所々黒くなっていた
雨上がりの土はいつもと違い皮膚にべったりとつきやすく固くない
父親は「○子も一緒に落としちゃった」と
珍しくしまった顔をしていましたけど
それは父親の照れ隠しで本当は私の身体は叔母の上に落ちるように
コントロールしてくれたと当時は思ったし
しまったと肩をすくめ おどけたような楽しそうな
難しい顔でない父の顔が珍しくて嬉しかった
土が晴れの日より雨の柔らかい日を選んだのも賢い父の計算のひとつなんだ
私は今 思う
こんな人間とは一瞬たりとも一緒に過ごしてはならない
私は残念ながら生まれながらにして
脳に障害があり隔離しなくては危険な人間
面倒をみた
もう面倒はみない
天気なんて関係なかった
衝動的に人を突き落とした
それ程重い脳の病気でした